不貞慰謝料

【不貞行為と慰謝料】示談書に書いておくべき条項とは?

今回、夫の不貞相手と示談書を取り交わすことになりました。示談書にはどのようなことを書いておく必要がありますか

今回はこのようなご質問にお答えします。

不貞行為の示談書で書いておくべき条項

0 表題

表題は「示談書」か「合意書」が多いと思われます。

1 不貞行為事実を確認する条項

弁護士
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まず最初に、その書類がどのような事柄に関する示談書なのか、特定しておくことは基本です。

柱書(はしらがき)に以下のような文言を入れておくことが一般的です。

(以下の条項例は、甲:不貞をされた配偶者、乙:不貞相手、丙:不貞をした配偶者として記載します)

甲と乙は、乙が甲の夫である丙と不貞行為を行った件に関し、本日、以下のとおり合意した

2 慰謝料の給付条項(支払義務・支払方法等)

以下の内容を記載します。

通常は、示談書の第1条、第2条など、冒頭に記載することが多いです。

(1)慰謝料の金額

(2)支払期日

(3)支払回数(一括または分割)

(4)支払方法(銀行振込の場合、銀行・支店・種別・口座番号等)

(5)振込手数料負担をどちらが負うか(通常は支払う側)

弁護士
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条項は、以下のようなものが一般的です。

【一括払い】

乙は、甲に対し、本件不貞行為に関する慰謝料(解決金)として、金〇〇〇万円の支払義務があることを認め、これを令和〇年〇月末日限り、甲の指定する金融機関口座(●●銀行〇〇支店 普通預金 ●●●●●● 口座名義:甲)に一括で振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。

【分割払い】

乙は、甲に対し、本件不貞行為に関する慰謝料(解決金)として、金〇〇〇万円の支払義務があることを認め、これを、分割して令和〇年〇月から令和〇年〇月まで、毎月末日限り、月額金〇万円を甲の指定する金融機関口座(●●銀行〇〇支店 普通預金 ●●●●●● 口座名義:甲)に振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。

3 期限の利益喪失条項・懈怠(けたい)約款

弁護士
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分割払いを認める場合には、相手が支払いを怠った際に、残額を一括請求できるようにしておくこと(残額を一括請求できるようになることを「期限の利益喪失」といいます)が重要です。

相手は約束通り支払うと言っている以上、この条項を入れることを拒まれることは通常ありませんので、必ず入れておくようにしましょう。

また、支払いが滞った場合の遅延損害金も入れておきましょう。

乙が前条の支払いを2回以上怠った場合には、当然に期限の利益を喪失し、甲に対し、直ちに第〇条の金員から既払金を控除した残額を支払う。

この場合、乙は、甲に対し、前項の期限の利益喪失日の翌日から支払済みまで、残額に対し、年〇パーセントの遅延損害金を付して支払う。

4 私的な接触禁止条項

配偶者と離婚する場合には不要かもしれませんが、配偶者が反省していたり、子がいるなどの事情で離婚しない場合や、まだ離婚するかどうかを決めかねている場合には、不貞相手に今後二度と配偶者と私的な接触をしないという約束条項を求めます。

「乙は、甲に対し、今後、丙と電話、メール、LINE等の手段の如何を問わず、一切私的な接触をしないことを約束する。」

同じ職場などでどうしても顔を合わさざるを得ないという場合も考えられます。

また、近隣に居住しており「道で偶然会った場合」などを想定しなければならない場合があります。

その場合には、「職務上やむを得ない場合を除く」とか「正当な理由なく」といった文言を付加することがあります。

5 違約金条項

示談書で、何か約束事を決めた場合、その拘束力を更に強固なものにするため、約束違反をした場合の違約金条項を入れることもあります。

「乙は、●項に違反した場合、甲に対し、違約金として金○○〇万円を直ちに支払う」

必ず入れなければならないという訳ではありませんが、約束をする方はかなりのプレッシャーになります。

6 秘密遵守条項

不貞の事実は、職場や友人知人などの第三者には知られたくないものです。

インターネットやSNSに公開されることも絶対に避けたいでしょう。

このため、不貞関係をもった事実や示談の内容を第三者に漏らさないという条項を入れることもあります。

「甲と乙は、本件不貞事実及び合意書の内容を、正当な理由が無い限り、第三者に漏らさないことを約束する」

7 求償権放棄条項

不貞関係をもった二人は、他方の配偶者に対し、共同不法行為をした者として連帯債務を負います。

したがって、不貞関係の二人のうち、一方だけが支払った場合、もう一方に対し原則として2分の1相当額の求償権(きゅうしょうけん)を持つことになります。

したがって、例えば不貞相手から200万円の慰謝料を支払ってもらえたとしても、配偶者が不貞相手から100万円の求償を受けてしまう可能性があります。

そうすると、離婚せず、家計が同じ場合、せっかく相手に200万円を支払わせたと思っていても、結局手元に100万円しか残らないことになります。

離婚をする場合は、配偶者が求償を受けてもどうでもいいことなのかもしれませんが、家計が同一の場合や今後の離婚に伴う財産分与の関係で、求償を受けないかたちで解決したい場合もあるでしょう

このような場合、不貞相手に自分の配偶者への求償権を放棄させる条項を入れます。

「乙は、丙に対する求償権を放棄する」

しかし、求償権は、相手の権利でもありますので、交渉のなかで、求償権を放棄する条件として慰謝料の減額を求められることがあることは留意しておきましょう。

8 清算条項

示談書を取り交わす目的は、示談の内容を明確にし、紛争に区切りをつけることにあります。

示談書を取り交わしたのに、後から蒸し返しをされては堪りませんよね。

そこで、「清算条項」を必ず入れます。

清算事項」とは、今回の示談書の取り交わしにより、本件紛争の一切を解決したものとして、今後本件紛争に関して、金銭の請求等を行わない(債権債務が無い)ことを確認する条項です。

甲と乙は、本件に関し、甲と乙の間に、本示談書の条項に定めるほか、何らの債権債務の無いことを相互に確認する。

といった条項を最後に入れます。

9 日付

合意した日(示談書を取り交わした日)は重要です。

将来、再度不貞が行われた場合などに、いつ示談が成立したかによって、違法性が変わってきたりします。

よく、年月日のうち「年」「月」は記入して置き、「日」を空欄にしたままの示談書を見かけますが、必ず「日」も埋めておくようにしましょう。

10 両者の署名・押印

押印は実印でなくても構いません。

2通作成し、各自1通ずつ保管することが通常です。

以上の合意が成立したことを証するため、甲と乙は、本書2通を作成し、署名捺印の上、各自1通を保有する。

まとめ

不貞問題を示談で解決する場合には、不倫の再発や将来のトラブル防止のため、示談書を作成します。

しかし、その示談書が不十分であったり、不明瞭で双方の受け止め方が異なっていては意味がありません。

また、示談書には、上記の他、不倫の事実内容を細かく記載したり、慰謝料の分割払いを定めたり、将来の誓約条項を入れたりもしますが、これらの内容は個々の事案によって異なります。

特に分割払いの場合は、単なる示談書ではなく、公正証書にしておくことの検討も必要です。

「示談書のようなもの」は一般の方でも作成可能ですが、法律相談の際にお持ちになる示談書を見ると、意味が分からないままネット上のひな形をそのまま流用して無意味な条項を入れていたり、論理的な矛盾が見られたり、公序良俗違反と言われてもおかしくないような示談書を持参される方もいらっしゃいます。

もし、ご不安があるようでしたら、弁護士のチェックを受けたり、作成を依頼することをお勧めします。

この記事が少しでも参考になればうれしいです!

それではまた!