婚姻費用

別居中の妻から高額の婚姻費用を請求された場合の損をしない対処法

現在別居中です。最近、妻からとても支払えない額の生活費の支払いを要求されました。要求通り全額を支払わなければならないのでしょうか。自分としては1円も払いたくないのですが。。

今回はこの質問を取り上げたいと思います。

過大な婚姻費用(生活費)を要求された場合の対処法

弁護士
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法律相談を受けていると、一方的に家を出て行った妻から過大な生活費の支払いを要求され、疑問を感じながらも要求通り支払を続けている方が一定割合でいらっしゃいます。

請求の意味合いを理解し、自分の意思で支払いをしているのであれば、特に問題はありません。

しかし、よく事態を理解できないまま、給料のほとんどを持っていかれ、住宅ローンも払い、手元に残るのは数千円程度、ということであれば、満足に自分の生活をしていくことも出来なくなります。

配偶者から過大な生活費を請求されているとお感じの方は、以下の内容を確認のうえ、対処していきましょう。

1 適正な婚姻費用の額を確認する

まずは適正な婚姻費用の額を確認しましょう。

配偶者からの請求が、適正な額なのか、過大な額なのかを確認しなければ、それ以降の対応を決めることができません。

適正な額の確認方法については、以下の記事をご確認ください。

【別居中の生活費の支払いは義務?】婚姻費用の算定・相場について こういった悩みをお持ちの方、実は非常に多いのです。 しかし、離婚するまでの間、相手には原則として生活費の支払義務があります...

2 請求額が過大であれば、要求通りの額は支払わない

適正な額が確認出来たら、配偶者から請求を受けている額が過大かどうかが判断できます。

配偶者からの請求額が過大であると判断された場合、対応としては、

1 当分の間、全く支払わない
2 自分が適正と考える額を暫定的に支払う
3 自分から婚姻費用分担調停を申し立てる

の3つの対応が考えられます。

このうち、1の「全く支払わない」は、扶養義務を果たさないことになりますので、積極的にはお勧めしませんが、相手から婚姻費用分担調停が申し立てられるのを待つという目的で、この手段を取る人もいます。

この手段のメリットは、配偶者から婚姻費用の調停を申し立てられるまでの間の婚姻費用の支払義務を免れることが出来る可能性があることです。

なぜなら、実務的には、婚姻費用を支払わなければならないのは、調停を申し立てた月以降の分とされているからです。

弁護士
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例えば3月に別居し、7月に婚姻費用分担請求調停が申し立てられた場合、3月~6月分の婚姻費用を支払っていなくとも、現実に遡って支払わなければならないとされるのは7月分以降になるからです。

逆にいうと、配偶者も調停申立月以降の分しか婚姻費用を遡って支払ってもらうことが出来ないということは分かっていますので、最近は、多くのケースで、別居後すぐに婚姻費用の調停を申し立てが行われています。

ですから、メリットとなるのは、配偶者がそういった実務を知らない場合になります。

私としては、2の「自分が適正と考える額を暫定的に支払う」か3の「自分から婚姻費用分担調停を申し立てる」もしくは2と3の併用を依頼者に勧めることが多いです。

弁護士
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ちなみに、「自分が適正と考える額」=算定表の額です。

法律上の義務を負っている以上、算定表で計算される額は支払わなければなりません。
婚姻費用が生活に直結する支払であることから、全く支払わないというのは好ましいとはいえません。

ただ、相手があなたの通帳を持って出て自由に使える状態であるとか、実家に帰っており、当面の生活は問題無さそうという場合には、1の不払いにして様子を見るということもありうるでしょう。

3の「自分から婚姻費用分担調停を申し立てる」については、婚姻費用を支払う側が、「適正な額を決めたい」という目的で婚姻費用の調停を申し立てることは何ら不自然なことではありません。
調停手続の中で適切な婚姻費用の額について話し合えばよいのです。

相手が過大な請求に固執して、額の合意に至らない場合には、調停は不成立となり、審判手続で裁判所が判断します。

弁護士
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裁判官が審判で判断する額は、おそらく算定表による額に近いものとなることが予想されます。
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算定表に見合う額を毎月暫定払いしておけば、未払い分を遡って一括払いする必要もなくなりますし、裁判所からみても、「法律上の扶養義務としての生活費を一切支払わないで何か月も過ごしてきた」場合と比べ、心証は悪くならないと思われます。

なお、当たり前の話ですが、離婚を希望せず、やり直しを求めるという方針を取るなら、婚姻費用の支払いは絶対に必要です。

婚姻費用を支払わなかったり、ケチるような相手と関係を戻したいと思う人はいません。

3 離婚を希望するなら、直ちに離婚調停を申し立てる

夫婦である以上、婚姻費用は、離婚が成立するまで支払い続けなければなりません。

したがって、離婚を希望する場合には、出来るだけ早く離婚に向けて動き出さなければなりません。

協議で離婚できない場合、離婚を実現するには、調停・裁判を経る必要があります。

訴訟を起こす前に調停を経なければならないという決まり(調停前置主義)がありますので、離婚を希望する場合には、調停を申し立てておくことが重要です。

調停を申し立てたからといって、必ず調停の場で離婚協議をしなければならない訳ではありません。

調停申立をして、期日の指定を受けておきながら、同時並行で離婚協議を行い、協議がととのったならば、調停を取り下げればよいのです。

弁護士
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相手から婚姻費用分担調停が申し立てられている場合には、離婚調停を申し立てれば、両調停事件は併合されて、同じ日に話し合いが行われることになります。

4 一切支払わない場合どうなるか

相手から婚姻費用の請求を受けた場合に支払をしなくても、直ちに給与差し押さえ等の強制執行がされるということはありません。

しかし、既に調停や公正証書で婚姻費用を定めていた場合には、支払わないと、直ちに強制執行が行われることがあります

給与差し押さえが行われる場合、手取り給与の2分の1まで差し押さえることが出来るうえ、相手が取り下げない限り、未払い額がなくなっても給与差し押さえは継続します(但し上限は定めた養育費の額)。

勤務先にも迷惑になりますに、何より、毎月の手取給料の半額が抑えられてしまうということを想像してみてください。

弁護士
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決まった婚姻費用は必ず支払いましょう。

まとめ

婚姻費用の請求は、生活費の請求ですが、実際には離婚を有利に進めるための戦略としてされることも多いです。

婚姻費用は、夫婦である以上必ず支払わなければならないものですので、支払をする側は、協議や調停が長引くほど、婚姻費用の支払期間が長期化することになります。

仮に例えば、算定表の婚姻費用が月10万円であるとすると、調停が1年長引けば、10万円×12か月合計120万円を支払わなければなりません。

訴訟となり、調停から例えば3年もかけて離婚の勝訴(認容)判決が得られたとしても、3年で360万円をその時点で支払っていることになります

弁護士
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相手は、「調停が長引くほどそちらは経済的負担が大きくなるのだから、早く離婚したいのであればこちらの提示する条件を飲め」という戦略で調停を展開してきます。

財産分与は長期化しても別居時基準で2分の1ルールが適用されますので、長期化して婚姻費用を支払い続けると、経済面では相当不利な結論となってしまいます。

弁護士
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相手がこのような対応をしてきた場合、こちらもしっかりと主張を行い、相手の弱点を指摘して対等な交渉に持ち込まなければなりません。

自分で対応するのが難しい場合には、弁護士に依頼することも選択肢として考えてみましょう。

それでは、また!